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「はい?」
身長148cm、ミニマムな篠田夏帆(しのだ・かほ)が明らかに表情を強張らせている。しかし、あれだ。構うものか。
「だから、何度も言わせるな」
「ですが、栗生(くりゅう)君……」
小動物みたいな潤んだ瞳で見ても無駄だ。
「長年の夢なんだ」
「……マジ、デスカ?」
「何故、カタコト?」
「何故って? 何故って聞きたいのはこっちですが?」
◆◆◆
土曜日の午後、学校帰りに立ち寄ったカフェは沢山の客で溢れ返っていた。注文したスペシャルいちごパフェに御満悦な篠田を眺めながら、俺はカフェラテを口に運ぶ。
「今日、親いないんだ」
幸せそうに最初の一口をした瞬間の篠田に告げる。
「そそそ……そうなの?」
単純な篠田の事だ。心の中では、きっとこう思っているに違いない。
『完璧に誘われてますよね? 勘違いじゃないですよね? でも、でもですね! 心の準備というか、ぼぼぼ……ボデーのメンテナンスがですね!』
「飯、作るから来ないか? 帰りは送るから」
抗いがたい俺様スマイル。完全に退路を断つ。
「う、うん」
そうすれば篠田は逆らえず、頷くしかない。
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