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「た―――ん、――たな―くん!―――田中くん!!
」
はっ
「す、すいません!なんでしょう…」
「大丈夫?顔色悪そうだから…」
グイッと顔色を伺うように近づけるられた距離に息を呑む。
「だ、大丈夫です。大丈夫ですからっ 」
そう? といいつつじっとこちらを見る視線に背中が凍る。
「もしかして風邪?」
そっとオデコを触ろうとする手を見た瞬間、胃の奥が動くのが分かった。
「ちょっ と、トイレに行ってきますっ」
焦るな 焦るな自分!
自分を心配してくれた同僚の女性に少し会釈して席を立つ。
ドッ ドッ と嫌な振動を繰り返す左胸を握る
鳥肌が立つ感覚に、触れられなくて良かったと安心する。
落ち着け落ち着けと言いながら逃げ込むように入り込んだトイレで、せり上がる吐き気を飲み込む。
喉の奥が少し酸っぱくてジワリと涙が浮かんだ。
が、出なくてよかった。
「今なら…吐く自信しかない…」
迫り来る手を思い出し、ゾワリと毛を立たせる。
いや、“今も” か。
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