そこのベンチ。

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″明日、授業何時に終わる?″ ″授業は午前中で終わりかな。あ、でも明日わたしバイトだ。″ ″そっか。僕もごはん食べに行くから、同じくらいかな~“ なんでもない会話をして歩く。 “久しぶりにサークルの飲み会に行くんだ~“ “サークル?幽霊部員なのにね~よかったね、誘ってくれて。” “本当だよね、バスケなんて1年ぐらいやってないよ。” なんでもないことを話しながら 右手に持っていた買い物袋を無意識に左手に持ち替える。 ″ん?唯ちゃん、疲れてきたでしょー買いすぎちゃったもんね″ そう笑って、自分でさえ意識していなかったことに気づいてくれて、 私の分の買い物ぶくろも持ってくれようとする。 良い彼氏でしょ? そう。自慢の彼氏。 だと思う。普通だったら。 けど、ここで休もうよ。と すぐそこにある見慣れたベンチを指さすことはどうしても出来なくて。 それが私と彼の絶対的距離。 それが悲しくて、寂しくて、もどかしくて。 結局、幸せな錯覚は、所詮錯覚でしかなくて。 私はいつも、こうやって現実に戻される。
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