第1章

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また来てしまった。扉を超えたその先に私の望む世界が広がっている。見渡す限りの甘いもの。心ではわかっているのに、頭が動いてしまった。甘いもの食べたい。僕の周囲は甘い匂いで満たされていた。 ことの始まりは先週だった。ふと職場の同僚がこんなことを言い出した。 「俺らって若々しくないっていわれるよなぁ。だったら、1ヶ月でどれだけ若くなれるか勝負しようぜ」 1ヶ月で効果が出るものなのだろうか。そんな事を思いながらも承諾してしまった。 「若々しさを作るのは、オーラだ。まず全員で美肌になろう」 そこで僕はいつも食べる甘いものを我慢することにした。果たしてできるのだろうか? そんな事を考えつつも始まった勝負。吐いた唾を飲むわけにもいかない。 「受けて立ちます」  そう言ってしまった。そして案の定これだ。やはり来てしまったケーキ屋さん。白めの光で照らされるショーケースには数々のケーキが並べられている。もう戦いが始まって1週間である。食べて当たり前のチョコレイトが莫大な量である。少し食べたら満足出来るわけでもない。ショーケースのケーキが輝きを放った。  「あなた、もう疲れたでしょう?私が癒してあげる。大丈夫。バレないわ」  鼻に匂いが響いてきた。頭に広がる甘い匂いが脳を麻痺させた。 「ありがとうございました。またお越しくださいませ」 冷たい風が麻痺した脳を刺激した。僕は負けてしまった。ここで我慢しないといけないのに。僕はいつもそうだった。つい自分に負けてしまう。ここで我慢できていたなら……。 「苺がちょっと酸っぱいなぁ」  久しぶりの甘いものは、全てを無に帰してしまった。 エッセイになってないといわれましたー
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