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ここは、地元のライブハウス
『Dick Head』。
キャパは小さく収容人数は
100人程だが、
35年も続く老舗のライブハウスで、
ここから有名になって、
活躍しているバンドも、
そこそこいる。
そして、VEZELは、
ここ『Dick Head』を拠点として
活動していた。
†††††††††††
スポットライトが消え、
場内から、怒号の様な
歓声が上がる。
天賀先輩は、自分専用の
真っ赤なお立ち台の上に乗る。
『この会場ブッ潰しちまえよ!
かかってこい!!!!!』
黒のアイラインを引いた
鋭い目元は、
人でも殺せそうな程の目力。
動脈を切ったみたいに毒々しい、
深紅の唇は、挑発的な笑みを
浮かべている。
ダン!ダン!ダン!!
ドラムが激しくリズムを
刻み、演奏が始まった。
心臓に突き刺さる爆音。
ライブハウスの床が、観客が
飛び跳ねる振動で揺れている。
VEZELには、女の子に
媚びた様な恋愛ソングは一曲もない。
ただ、激しくて、刹那的で、攻撃的。
私は曲に合わせ、拳を振り上げ、
頭を振り乱す。
汗に濡れた先輩の身体が、
ライトに照らされて、艶かしい
光を放つ。
客席を睨み付ける様に唄う彼の眼は、
瞳孔が大きく開いて、
ギラギラ光っているから、
まるで暗闇の中にいる猫みたい。
「琉生ーーーーーッッ!!!!」
私は、その瞳の中に映りたくて、
いつも必死に手を伸ばす。
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