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屋敷の扉の前に黒塗りの車が停まっていた。厳つい顔したスーツの男が3人待ちぼうけているように見える。
「あぁ、娘さんでしたね? そちらの子は」
「と、クラスメートです。また入れてくれなくなったんですね。開けます」
大きな扉の隣にあるドアから男達を敷地に入れてからアカリを引っ張っていく。
アカリは男の1人に見覚えがあったが、誰だったか分からずうんうん唸る。
「総理大臣、防衛大臣、市長」
「それだ! もしかして五行ちゃん凄い人」
「凄い人、の子孫なだけ」
長い道を通り過ぎ、アカリの自室より広い玄関で靴を脱ぐ。綺麗に靴を揃えるアカリの隣でセンは脱ぎ散らかしてじっと見詰める。
その目は早く、と促しているようにも取れた。
「だ~か~ら~、俺じゃなくてもいいだろって!」
奥から苛立った様子の青年の声がする。
「ちっ。じいちゃん、またうるさくして……黙らせてくる!」
「あ、はい」
初めて聞いたセンの感情のこもった声に驚く。
床が抜けそうな程に音を立てて廊下を走っていくと2人の言い争う声が響く。
「せっかく友達呼んだのに、逃げたらどうすんのさ!」
「ついに友達が出来たのか!? こうしちゃいられん」
ドタドタドタドタドタドタ!
何やらただならぬ気配と共に2人の男女が玄関に走ってくる。
センと白髪だが20代後半の顔に着崩れた和装の男が荒々しい呼吸をしながらアカリの目の前で腰を落とす。
「あははは」
苦笑いを浮かべたアカリはこう思った。
(なんだろう、すっごく帰りたい)
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