第1章

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 私はすぐに、その後を追いかけます。  「なるべく、いいやつを選ばないとね」  咲ちゃんは、ダンボール箱を覗き込んでいます。  「それに、形もきちんと揃えないと」  「うん。……ところで、何ユリだったっけ?何か、強そうな名前だったけど」  咲ちゃんは花のひとつを手に取りました。顔の前に近づけて、両目を真ん中に寄せます。  「テッポウユリだよ」  「ああ、そっか。でも、何でテッポウなの?」  「それは知らないけれど……」  「鉄砲玉に手向ける花とか?」  「テッポウダマ?」  「知らない? やくざ映画とかで、敵の組長の命取りに行く人」  「……知らない」  「鉄砲玉はさ……一度飛び出すと、戻ってこないんだよね」  「……どうして?」  「だって、相手のやくざに殺されちゃうんもん……飛び出したら、戻ってこない。だから、鉄砲玉」  「…………」  「淳は……戻ってくるかな? それとも、もう、こっちには来ない?」  「花……別のにしようか?」  すると咲ちゃんは、目を丸くして首を振りました。  「ううん! そんなの必要ないって。この花、かっこいいし」  テッポウユリは、パーティーで使うクラッカーのような形をしています。だから、この花を選んだのです。尖った方を下にして、頭に立てたら、立派な冠のように見えると思ったのです。  咲ちゃんは、テッポウユリから視線を外すと、寂しげに微笑みました。  「鉄砲玉ってのはさ、だいたい幹部の椅子が待っているんだよね。もい万一、戻れたらの話だけど」  「ふうん……」  「だからね、あたし達が、その椅子なんだってメッセージを込めてね。……この花がいいよ」  「うん……」  私は深く頷きました。  淳くんにとって、私たちがそういった存在であるんら、こんなに嬉しいことはありません……。  「じゃ、はじめよっか」  「うん」  ………………。  …………。  ……。  しばらく経った時のことでした。咲ちゃんが、ぽつりと言いました。  「ねえ、小由利……」  「え? 何?」  妙にしんみりした口調だったので、私は不思議に思いました。  「小由利が、あれ、……小堺に目の敵にされていた理由って、淳に話したの?」  「あ……ううん、別に……」  「話して無い?」  「うん……」  「そう……」  咲ちゃんは私から目を転じると、遠い視線を辺りに向けました。
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