第1章

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 その表情を見て、私はふと不安になりました。  (そう言えば……)  前に咲ちゃんは、淳くんの事が好きだと言っていました。はっきりと。不思議と、忘れていました。いえ、考えないようにしていたと言った方が、正解かもしれません。  「小堺がああなった理由って……あいつが好きな男子を、小由利が振ったからなんでしょ?」  「だと……思う」  小堺さんが、かつて私に向けた言葉から推測すると、どうもそのようなものでした。  「八つ当たりだね……」  それでその話は終わりになったらしく、咲ちゃんは手元の花に視線を落としました。  「どうして急に……そんな話を?」  私は咲ちゃんの横顔をじっと見つめます。  「ん? 別に……」  こちらに横顔を向けたまま、そう呟きました。  気のせいでしょうか? その口元が、心なしか強張っているようで……。  ………………。  …………。  ……。  花の選別がようやくのことで終わりました。なるべくいいのを選びたかったのです。たとえ、すぐに萎れてしまうとしても……。  「じゃあ、半分ずつ作ろう。で、それを後で繋げるってことで」  「うん」  私たちは、早速作業に取りかかります。と、咲ちゃんが言いました。  「あたしはさ、さっきはああ言ったけど……」  「え? さっきって?」  「だから、鉄砲玉とか何とか」  「ああ、うん……」  もう戻ってこないという話です。  「あたしは別に、二度と会えないだなんて思ってないよ。別に、火星に移民するわけでも無いんだもん」  「うん……そうだよね」  咲ちゃんはにこりと微笑み、  「学園が休みに入ったらさ、こっちから会いに行ってもいいんだし」  「うん」  そうでした。  別に、それほど悲観的になる必要は無いのです。今生の別れ、という訳でも無いのですから……。  「あのさ、小由利……」  そう呟き、とても厳しい表情を私に向けました。  「もう、二度と会えないんだったら、あたしはこんなこと言わない。言っても、仕方ないから」  「何の……話?」  「小由利さ……」  その瞳は、怖いくらいに真剣そのものです。  「淳のこと、好きなの?」  「あ……」  思わず、絶句しました。  「…………」  「…………」  「どうなの?」  「あ、あの……」  視線を避けるように顔を伏せました。  
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