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その表情を見て、私はふと不安になりました。
(そう言えば……)
前に咲ちゃんは、淳くんの事が好きだと言っていました。はっきりと。不思議と、忘れていました。いえ、考えないようにしていたと言った方が、正解かもしれません。
「小堺がああなった理由って……あいつが好きな男子を、小由利が振ったからなんでしょ?」
「だと……思う」
小堺さんが、かつて私に向けた言葉から推測すると、どうもそのようなものでした。
「八つ当たりだね……」
それでその話は終わりになったらしく、咲ちゃんは手元の花に視線を落としました。
「どうして急に……そんな話を?」
私は咲ちゃんの横顔をじっと見つめます。
「ん? 別に……」
こちらに横顔を向けたまま、そう呟きました。
気のせいでしょうか? その口元が、心なしか強張っているようで……。
………………。
…………。
……。
花の選別がようやくのことで終わりました。なるべくいいのを選びたかったのです。たとえ、すぐに萎れてしまうとしても……。
「じゃあ、半分ずつ作ろう。で、それを後で繋げるってことで」
「うん」
私たちは、早速作業に取りかかります。と、咲ちゃんが言いました。
「あたしはさ、さっきはああ言ったけど……」
「え? さっきって?」
「だから、鉄砲玉とか何とか」
「ああ、うん……」
もう戻ってこないという話です。
「あたしは別に、二度と会えないだなんて思ってないよ。別に、火星に移民するわけでも無いんだもん」
「うん……そうだよね」
咲ちゃんはにこりと微笑み、
「学園が休みに入ったらさ、こっちから会いに行ってもいいんだし」
「うん」
そうでした。
別に、それほど悲観的になる必要は無いのです。今生の別れ、という訳でも無いのですから……。
「あのさ、小由利……」
そう呟き、とても厳しい表情を私に向けました。
「もう、二度と会えないんだったら、あたしはこんなこと言わない。言っても、仕方ないから」
「何の……話?」
「小由利さ……」
その瞳は、怖いくらいに真剣そのものです。
「淳のこと、好きなの?」
「あ……」
思わず、絶句しました。
「…………」
「…………」
「どうなの?」
「あ、あの……」
視線を避けるように顔を伏せました。
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