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「そげゆきさん、遅くまですみません。
どうしますか?」
「ああ、この天気じゃタクシーも呼べそうもないし、悪いけど泊まらせてもらうわ。
一応寝袋もあるし。」
まだ、車が走れないほど積もっているわけじゃないが、終バスが終わって雪が降りだせばタクシー会社に電話してもなかなか繋がらないのは目に見えている。
おれも天気さえ持てば元々夜を明かすつもりだったし。
しかし、彼女でもない女の子の部屋にふたりきりで泊まるのはやはり気が引ける。
幸い、星野に対してそういった感情を今まで持つこともなかったので、泊まっていく事にしたが、これでよかったのだろうか。
星野は部屋の暖房を入れると『着替えてきます。』と風呂場へ向かった。
戻ってきた星野は、キャンパスで見たことのない髪をアップにしてTシャツと短パン姿。
要するに部屋着なわけだが普段着のダボダボ感が無いだけでこうも印象が変わるものなのか。
なんか誰かに似ている気さえする。
『あ、楽にしてて下さいね。』
なんか急に緊張感が出てきた。
思えば、正直おれはこんなシチュエーションを経験したことがなかった。
いくぶん暑くなってきた部屋の暖房を少し落とすと、『ビールでも飲みますか?』と冷蔵庫から350缶を2本持ってきて座った。
「今日はありがとうございました。」
「お疲れ。」
とりあえず乾杯して飲み始めた。
「うまく撮れてるといいね。」
「まあ、ダメ元ですから。」
「明日はどうする?」
「天気次第ですかね。
あ、晴れても明日はひとりでやりますから。」
「ひとつ聞いていいか?」
「何ですか?」
「おそらく数多くいるであろう幽霊部員の中で、何でおれに声をかけた?」
おれは最初は聞くつもりは無かったが、なんとなく気になっていた事を聞いてみる事にした。
「それ、聞きますか。」
「いや、答えなくてもいいけど。」
「んー、どうしてかな。
なんか、一度ちゃんと話してみたかったなって。」
「なんで?」
「だからあのとき、仲村先輩から逃げるに逃げられなかったとき…」
「えっ、チョット待って。
なに?あの時の子って星野だったの?」
おれの頭の中で何かが迷走を始めた。
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