2人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、びっくりした。
そげゆきさんですか。」
「ああ、無断で入ってごめんね。
今までまともに話してなかったから、悪いと思って。」
「そんな、あたしこそなんかしつこくおしかけちゃってすみませんでした。」
「それはもういいよ。
で、なんとかなりそうなの?
活動報告?」
「それですか。それは、もういいんです。」
「え、そうなの?」
「もう諦めました。
あ、そげゆきさんのせいじゃないですから。
心配しないで下さい。」
「え、どういうこと?」
「この12月に賭けてたんですけど、
あまりに条件が悪くて。」
「条件って?自治会に無理難題押し付けられたとか?」
「あ、そうじゃなくて、天気です。ここのところものすごい寒気団が日本を覆って、明日あさってなんか夜に星を眺めるどころか、雪まで降るみたいじゃないですか。」
「明日あさって?
あ、“ふたご座流星群”か。」
今日は12月12日。
ふたご座流星群は13日から14日にかけて現れるとされている。
しかし、寒波の襲来も13日から14日にかけてやってきて、
この時期いつもの年なら雪なんか縁のないこのあたりでも雪の予報が出ていた。
もちろん雪なんか降らなくても空が雲に覆われているだけで天体観測なんかできない。
「そうか。でも、まだ可能性はあるんでしょ。」
「でも、この自動追尾装置とカメラだと、2時間の間シャッター開けといて、雲が少しでも邪魔したらまともな画は撮れないんですよ。
だから、諦めました。」
口ではそう言いながら悔しさを抑え、かなり落ち込んでいるのは見てわかる。
そんな星野を見ておれはつい、
「いいじゃん、ダメで元々でもチャレンジしようよ。」
そう言ってしまった。
「えっ、お手伝いしてくれるんですか?」
「あ、いや、
とりあえず今回だけな。」
「ありがとうございます。」
こうして13日、14日の夜、おれは星野と流星群観察をすることになってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!