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ここに陣取ってから1時間が過ぎたが、空模様は相変わらず。
星空を見上げるのは嫌いじゃないし、むしろひとりで立ち止まって首が痛くなるまで空を見ていた事だってある。
少し眼が慣れて全くの暗がりというわけじゃなくなってきたとはいえ、雲の流れを見続けるのはさすがに飽きてきた。
2時間が過ぎ夜8時を回った頃、リクライニングを戻し、買って来たメロンパンをかじる。
「星野、食うか?」
「あ、今はけっこうです。」
「そうか。
なあ、星野。」
「はい。」
「お前が星空が好きなのは良くわかった。
でもなんか他の事には興味ないのか?」
「えっ、他の事…ですか?」
「そう、例えば、
アイドルとか、アーティストとか、ファッションとか、スイーツとか。」
「そうですね。
うち、テレビないから。芸能人とかよくわからないし。
ファッションは、安さと機能性重視ですね。」
「スマホのアプリとか、パソコンとかは?
別に機械オンチじゃないだろ。」
「機械オンチじゃないと思いますけど、パソコンや携帯は“便利なツール”ですかね。
それに、あたしまだガラ携なので。」
「じゃあ彼氏…いや、
好きな男とかはいないのか?」
「彼氏、今はいませんよ。
高校卒業してからは。」
「へえ、そうなんだ。
まあ、彼氏なんかいたら『泊まってもいい』なんて言わないよね。」
「でも、前の彼にも『お前って星以外興味ないのか。』って振られたようなもんですから。
そんなことないんですけどね。」
「ああ、わかった。
星にしか興味が無いんじゃなくて、一番興味があるのが星だっていう事ね。」
「そう、そうなんです。」
「あれ、少し星が顔だしてきたか?」
「そげゆきさん。」
「これは期待できるかも。」
西の空の雲の切れ間が少しずつ拡がってきたようだ。
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