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「マウラは、真裏。まことのこころ、っていう意味なんだって」
ふと気が付くと僕は、見慣れた空間に立っていた。グレーのカーペットに、白い壁紙、ブラウンの学習机。真っ白なカーテンが初夏の風に揺れるその手前には、白いベッドに半身だけ起こした、真浦(まうら)の姿があった。
「ねぇ、知ってた?」
真浦の部屋は可愛らしいというよりは、清楚という印象が強かった。ベッドカバーやカーテンに揺れるちょっとしたフリルの装飾が、どこかつつましく女の子らしさを主張しているような。
「ヒカル……?」
「ん……?」
真浦に名前を呼ばれて、我に返った。
きょとんと眼を見開いた真浦が、僕の顔を覗き込んでいた。
さらさらと流れるような長い黒髪が、薄桃色のパジャマの肩に掛かっている。
優しげな光を宿した瞳もちゃんと黒い。紺色じゃない。
何だか今の今まで、悪い夢でも見ていたような気がする。ずっと心臓に巻き付いていた針金みたいな束縛が、ふっと消え去るような安心感に包まれる。
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