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「――ギイ!」
それでは、またギイに迷惑をかけることになる――そう言おうとした時。熱い唇が夏月の唇をふさいでしまった。
何もかも溶かし、呼吸まで奪っていくような、深く激しいキス。夏月の唇をこじ開けるようにして、ギイが滑り込んでくる。そして怯えて縮こまる夏月を強引に吸い、絡め取り、翻弄していく。息苦しさに顔を背けようとしても、それすら許してくれなかった。
――本当に、ここにいて、いいの……?
夏月の言葉は声にならない。
けれど激しい口づけの中で、唇から唇へ、呼吸から呼吸へ、この想いが伝わればいいと願う。
本当はどこへも行きたくなかった。ずっとこの部屋にいたい。
ギイのそばに、いたい……!!
ようやく濡れた唇が離れていった時には、夏月は身体中の力が抜けてしまい、膝が震え出すのを止められなくなっていた。
強く吸われ、噛まれて、容赦なく苛まれた唇は、熱を持って疼き、ぽってりと腫れてしまったように感じられる。
ギイのキスは夏月の頬から顎、耳元へと這っていく。上気して桜貝のようになった耳朶を舌先でつつき、歯をたてる。
「俺を本気で怒らせたらどうなるか、思い知らせてやる。この身体に、たっぷりと――」
低くささやかれる声に、ぞくりと身体が震える。
まるでジェットコースターが動き始めた瞬間みたいに、期待と不安が入り交じり、身体中をざわめかせる。指先までかあっと熱くなり、どきどき脈打つ心臓が破裂しそうだ。
ギイは軽々と夏月の身体を肩に担ぎ上げ、片手で寝室へのドアを開けた。何の灯りもないベッドに、夏月はどさっと荷物みたいに放り出される。
「わっ!」
荒っぽい扱いにも抗議できず、夏月はただギイを見上げた。
暗がりの中、ギイは着ているものを脱ぎ捨てた。均整のとれた美しい身体がシルエットになって浮かび上がる。その光景を、夏月は声もなく見つめていた。
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