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夏月はたった一人、
寒い街を歩いていた。
もうギイのところへは帰れない。
自分がいたら、
ギイに迷惑がかかる。
今日だって、
ギイは悪くないのに、
警察が来た……。
罪を犯したのは、
ギイじゃない。
りつ子に命令され、
売春していたのは、
夏月なのだ。
何も言わず、
走り書きも残さずに出てきてしまったけれど、
ギイはきっと判っているだろう。
むしろ厄介な荷物が自分から出ていってくれたと、
ほっとしているに違いない。
けれど、
これからどこへ行こう。
夏月は当てもなく、
周囲を見回した。
どこへも行く場所がない。
夏月はわずかな金額を持っただけで、
飛び出してきたのだ。
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