レグバ、翻弄される

羽田空港

バス案内の係員は、遅れている航空機のスケジュールを確認するのに気を取られ、横浜行きのバスと熊谷行きのバスを間違えて案内してしまった。

案内された老人は素直に所定の乗り場に行きスーツケースを係員に渡すと、家とは反対方向行きのバスに乗り込んだ。

出張帰りのサラリーマンは、楽しみにしていたお目当ての空弁が買えなかった。

両親を迎えに来た孝行息子は、駐車場をさんざん探し回った上に空港第一ビルと第二ビルを間違えた。

女子高校生は携帯を落とし、両親を探している男に全体重を乗せて踏まれ、修復不可能なほど破損させられた。

手荷物受け渡し場ではいくつものスーツケースが紛失し、荷物を受け出すのに夢中になっている親の後ろでは兄弟喧嘩が勃発し、老人が不整脈を起こしていた。

一つ一つはどうということではないが、レグバの回りでは数多くのトラブルが起こっていた。

つまらなそうに辺りを見回したレグバは、これが正常。とつぶやいた。