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レグバはその島で一番高い山の頂上にいた。東風が強く吹いている。
極東の国の南の島。さらに小さな、住人は200人にも満たないのどかな島。
島一つが村で、名前をイエソンという。
唯一つの山、グスク山は別名タッチューと呼ばれていた。
タッチューというのは、立つ、あるいは尖っているという言葉が変化したもので、名前のとおりグスク山は遠くからでもその尖った姿を見せていた。
島唯一の起伏であるグスク山からは遮るものは何もなく、頭の上には空、西と北には海、東には本島、南には田や林に囲まれた村落が見える。
岩肌の露出した山のてっぺんに、相変わらずレグバは黒いコートを着て立っていた。
悪魔にはあまりにも相応しくない明るい景色と気候。だが、ここにも彼を呼ぶ人間の声がした。
「さて」
レグバは前髪とコートの裾を風に嬲らせていたが、登山客の気配に、そろそろ行くか、と決心した。
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