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朝英は三線を構えると、ちんだみ(調弦・音を合わせる)を始めた。
右の人差し指には、象牙を模したプラスティックの爪が嵌められている。
三線本体は、彼が子どもの時から弾き続けている、祖父から譲られた年代物だった。
レグバは朝英の隣に腰を下ろした。
「あ、茂みとか塀にはハブがいることがあるから気をつけてね」
何ということもなく自然に注意を促すと、朝英は突然歌いだした。
静かなのんびりとしたメロディだ。ぽつん、ぽつん、と間延びしているように聞こえる。
この島のはるか昔の王朝で、舞姫たちが優雅に踊った曲だ。
朝英の声は朗々と響く。声の出る前にほんの少し下げた声を出し、三線のメロディとともに、音を引きずり上げる。
それが踊り子たちの足を出すガイドになる。
三線の旋律は、原則歌と同じ。だが、声が伸びている間に、新たな音がその間を埋めていく。
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