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しばらく、心の中で方向性を見つけるのに必死なレグバと、一見のんびりと夕餉を楽しんでいるように見える二人は、温度差を抱えたまま食卓を囲んでいた。
「うりっ」
スージーが声を上げたのと電話が鳴ったのは同時だった。
朝英が飛び上がる。
「おしっ。だあ。はい。はい。そうです……」
先ほどの電話の主からで、どうやら犬の名前を聞きだすのに成功したらしい。
「ああ。ええ、そう。正解です」
スージーはにんまりと笑った。ほおら、ほんもんかどうか分かったらしいね、と。
「はい。分かりました。では」
静かに受話器を置くと、朝英は祖母の方に向き直った。
「おばあ。わんは東京へ行くよ。さっき言ったとおりらしいさ」
「わんのくとぅ(事)は心配ない。頼んだよ」
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