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モノレールはトラブル続きだった。
ダイヤに乱れのないはずのモノレールが十分遅れた。誰かのスーツケースが全開して、土産物や洗濯物が散乱した。レグバの近くにいた赤ん坊は何かに怯えたように泣き続けていた。
「あー、どうした?あかんぐゎ、ちむがかいがあるか?」
朝英は、笑顔で赤ん坊の眼を覗き込んだ。すみません、と若い母親は恐縮する。
車内は満員で、あからさまに煩がる乗客もいた。
「ちにすることはないよ。あかんぐゎは泣くのが仕事だっからよー」
「すみません」
しきりに頭を下げる母親にも、朝英は笑顔を向けた。朝英はレグバに向って、にーにーは少し離れていてくれ、と指示する。
すると、赤ん坊はすがるように朝英に向って小さな手を伸ばし、朝英の指をしっかりと握った。朝英は眼を細め、指を左右に振った。
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