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「ほうか、広大(こうだい)はわんが好きか」
「え?何故この子の名前を知っているのですか?」
それまで好意的だった母親が、とたんに険しい表情になった。何故子どもの名前を知っているのか、もしかして私たち親子をつけてきたのか。と。
「あ?ああ。ここに書いてあるさ」
朝英は、ベビーカーに付いている名札を空いている手で弾いた。
「あら。すみません。私ったら」
「良かったさ。泣き止んだね」
「ありがとうございます」
朝英も少しはユタの素質を備えていた。
青森のイタコが亡くなった人を呼び寄せられるように、また生きている人の素性を見られるように、ユタは人の頭の中を読むことができる。
ただ、朝英はそう力が強くないので、無防備な赤ん坊相手に対してだけその能力を発揮できた。
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