レグバ、翻弄される

東京モノレール

長い間彼女は、密かに自分の夫が部下の女性と不倫をしているのではないかと疑っていた。

だが現実から眼を逸らし、わざといくつかの疑惑が確信に変わるのを認めないようにしてきていた。

自分には幼い息子がいる。今別れを切り出されたらどうしよう。自分は夫を愛している。それに、今自分一人で息子を抱えて生きていく自信はないと。

相談する相手もなく彼女は眠れない日々を重ね、家のパソコンに残された航空チケットの予約書を頼りに空港に到着する時間を見計らって、ふらふらと空港へ来てしまった。

別に証拠を突き止めてどうこうしてやろうという気持ちではないのだ。それを認めるのも怖い。

正常な判断力が鈍っていた。
彼女は睡眠不足の半分麻痺したような感覚で空港までたどり着き、到着客が出てくるのが見える場所で半身を隠していた。