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長い習慣か、ポルタメントのかかった奏法は、それでも異国のはっきりしたリズムを刻み調子よく上下した。
続いて、少年は自分の演奏に合わせて歌いだす。
伸びやかな、素直な声だ。この国独特の、ホーミーという、一人で二つの声を出す唱法も彼は会得していたが、単旋律で歌いこむ。
彼は盲目のせいか音感が研ぎ澄まされている。一度聴いた曲は忘れない。
言葉もこの国のものではないが、意味も分からないまま、忠実に再現をしてみせた。
「いい曲だな」
「ええ。不思議な曲です。よそから島に来た人と恋をした。でもその人は去って行った。私はずっとこの島で待っています、という意味の歌詞だったと思います。
ああ、またあの人に会いたいなあ」
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