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少年は夢見るように虚空を見上げた。
草原に囲まれ刺激の少ない毎日を過ごしている人々にとって、遠い町の話はなによりのご馳走だ。
少年は異国に行きたいとは望まず、かの人との邂逅を夢見ていた。
「君は、そのウチナーへ行ってみたいとは思わないのか?」
「とんでもない。僕はこの国で、この国の曲を演奏し続けたいと思っています」
「何故」
ネルグイは、そんな知らない所へ行くのは怖いです、と笑った。
「そのウチナーという島に、七つの魂を持つ人たちが暮らしているそうですよ」
「そうか。それは貴重な情報をありがとう」
レグバは手袋をしたまま、少年の黒髪を撫ぜた。
おそらく伝承というか、言い伝えに過ぎないのだろう、と思いながら。
髪はさらさらとレグバの指から零れ落ちた。
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