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その山は私じゃどうする事も出来ないから、上総にやってもらおうと離れようとした時だったのに、運悪くもその山に腕を引っ掛けてしまった。
見事に崩れる本や書類たち。
その中で異様な色を発する雑誌のようなものが一つ。
手を伸ばさなければ良かったのに。
そう頭で考えるよりも前に手はその本を崩れたモノたちの中から引っ張りだしていた。
まぁ、物の見事に表紙からムチムチなお姉さまがいらっしゃって。
ペラペラと中をめくると水着姿からもっと大胆なポーズまで様々。
みんな流石と思わせるくらい可愛くて、胸も大きくて、スタイルも抜群だった。
…上総もこういうの見るんだ。
別に上総だって男なワケなんだし。
エロ本の一つや二つあったってどうって事もないのかもしれない。
私だってそこまで純情乙女なワケじゃないから、こんな本を見たところで悲鳴をあげたりなんてしないわ。
だって、学生の頃何回大ちゃんの部屋からこういうのが出てきたことか。
遊びに行くと必ずと言っていいほどベッドの上や机の上に無造作に置かれていたもの。
患者さんで持ち込んでくる人もいるくらいだし。
そう。
他人なら気にしない。
上総だからなの。
正直、ヘコんだ。
私よりこういう子の方がいいの?とか、私じゃ物足りない?とか。
そういうどうでもいい事ばかり頭に浮かんでくる。
アンタじゃダメなのよ。
そう表紙の彼女から言われているような気がして、慌てて手元にあった他の雑誌で彼女を自分の視界から消し去った。
私じゃダメなの…かな。
確かにそんなに上手なワケでもないし、いつも上総にリードしてもらってるから自分で動くっていうのもしたことない。
そんな私じゃ満足させてあげられないのだろうか。
うわ、やな問題。
一旦保留にしておこう。
見なかったふりをして掃除を続けて、こうして今に至るのだ。
リビングにいるのはダイニングテーブルに突っ伏してる私とこの場に似合わない問題の例のヤツ。
結局どうしようか迷って一緒にいる始末。
上総は今日他のドクター仲間と飲み会中で、さっき帰るという連絡がきていた。
多分いつもの駅前の居酒屋で飲んでるはずだから、彼が帰ってくるまで早くて30分。
さぁ、それまでコイツとどうやって過ごそうか?
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