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慌てて駆け寄ってくる上総は、すっかり酔いも覚めてしまったみたいで素面の顔に戻っていた。
「ど、どうしてコレ…」
「漁ったわけじゃないから。掃除してたら本の山が崩れてきてコレが出てきたの」
「ウソだろ…」
何に対してウソだろって言ってるのか。
私が見つけてしまったこと?
それとも上手く隠しきれなかった自分のこと?
もうどっちだって構わないけど。
だって見た途端否定しなかったってことは自分のだって認めたってことでしょ?
尚更虚しくなってきた。
自分の存在を否定されたような気がして。
どうせなら一回くらい自分のじゃないって言ってくれればこっちの気も収まったかもしれないのに。
「否定しないの?」
「…いや、一応それオレのだから」
「はぁ!?」
オレのは分かってる。
私とアンタしか住んでないもの、この家は!
そこじゃなくて。
何なのよ、その言い方!
ずっと腹の中に溜めていた怒りがついに体の外で爆発した。
そんな音あるはずないのに、体のどこかでブチッと何かが切れる音が聞こえてきたような気がした。
「私よりこっちの方がいいオカズになるんでしょ!?別にそれは上総の好きにしてくれていいけど、わざわざ私が見るような所に置かないでよ!」
「俺が悪かったって。ちょっと落ち着いて俺の話も聞いてくれって!」
もうお互い冷静さを失って、どんどんヒートアップしていく。
こんな大ゲンカしたのは久しぶりかもしれないってくらい。
「もう何言ったって言い訳しか聞こえないし、そんなの聞きたくない!せいぜいその本の子たちで抜いとけば!?もう上総とは一緒に寝ない。知らないからっ!!」
上総のバカッ!!!
あまりにも怒りが収まらなくて、捨て台詞を吐いた私は上総に雑誌を投げつけてリビングを飛び出した。
待てよ、という叫ぶ声を背中の方で聞きながら。
派手に音を立てて自分の部屋のドアを閉め、カギを素早く掛けた。
部屋に入っても尚収まらない興奮。
どうしようもなかった。
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