仲直りは真夜中に

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「あらら、やっちゃったわね」 ガヤガヤと騒々しい職員食堂で私の前に座っている彼女が、その容姿にはそぐわないカツ丼を口に放り込む。 「麻里亜さん、よくそんなに沢山入りますよね…」 「明子ちゃんが少ないのよ。食べなきゃ働けないでしょ!」 綺麗な笑顔を浮かべて麻里亜さんはまた大きなカツとご飯を一緒に口に運ぶ。 私は食欲もあまりなくてサラダのみ。 麻里亜さんを見てるだけでもうお腹いっぱいだ。 麻里亜さんは結婚してから高橋医院を辞め、なんでだか分からないけど入間に来て内科医を続けている。 一緒に働くようになってからか、上総と結婚してからか分からないけど、今までより仲良くなってよく食事や買い物に行くようになった。 それで今日はこの食堂でランチをしながら彼女に相談しに来たわけだけど。 「で?今ケンカしてから何日目なわけ?」 「えっと…もうじき1週間ってとこですかね」 結局謝る機会を見つけ出せなくて1週間経ってしまった。 別に口をきいていない訳じゃない。 必要最低限の事は話すし、食事も一緒にいればちゃんと二人向き合って食べてる。 …けど。 寝るときは必ず自分の部屋に戻って夜を明かす。 悲しくなって涙を零しながら眠りについた日もあった。 彼が夜勤の日は上総に内緒で彼のベッドに潜り込んで、上総の香りに安心しながら眠るなんていう相当イタイことをしたし。 でも、どれにしたって上総の温もりは感じれない。 近くにいるのに。 謝る勇気が私にはなかった。 「1週間って!それ上総への拷問でしょ!いい気味だわ!」 私の気持ちに反して、麻里亜さんは大笑い。 「こっちは真剣に悩んでるのに…」 「ごめんって!だってエロ本一つで1週間一緒に寝ません!ヤりません!って女子高生なのって感じじゃない。かわいくって仕方ない!!」 麻里亜さんはテーブル越しに手を伸ばして私の頭をぽんぽんと撫でる。 完全に子供扱い…。 確かに麻里亜さんよりは歳下だけど。 ふふっと微笑みながら頭を撫でる麻里亜さんに少しだけ癒やされたのは確か。
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