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「え、何もないですけど…」
?がヒクヒクと引き攣る。
麻里亜さんの笑顔があまりに綺麗すぎて、逆に怖いくらいだったから。
とても断れるような状況じゃなかった。
「じゃあ、この後一緒に買い物行かない?ちょっと寄りたいとこあるの」
「買い物ですか…?」
「そう、駅前のビルのとこに寄りたくて。ご飯奢るから!ね?」
ね?という声と共にお盆を乗り越えて、麻里亜さんが私の前に乗り出してくる。
すごく気迫だったけど。
どうせ今日も家に帰ったってすること無いし、上総も日勤だった気がする。
会う時間が多ければ多いほど気まずくなるんだもの。
ここは麻里亜さんに甘えて連れ出してもらえた方がいいのかも。
「ご一緒させてください」
「はい、りょーかい」
ニコニコ顏をキープしたままの彼女はそう言い終わると、お盆を手にして立ち上がった。
それから私の横に立って、
「じゃ、6時半頃に職員入り口のとこね。待ってるわ」
そう告げた麻里亜さんは颯爽と食堂を後にしていった。
私はぽつんと1人席に残される。
まだボウルの中に沢山残ってる野菜はクタクタになっていた。
「何企んでるのかな、麻里亜さん」
独り言を呟くと同時にプチトマトを口に放り込んだ。
…あれは絶対何か企んでる目だった。
連れ出してくれるだけいいと思うべきなのか、企んでることを怖いと思うべきなのか。
もう一度残っていたレタスにフォークを突き刺した。
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