仲直りは真夜中に

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少し歩くと、 「先にお店の方向かっていい?お店閉まっちゃうといけないから。お腹空いてたりする?」 振り向いて彼女はそう言った。 「大丈夫です。麻里亜さんにお任せしますよ」 「じゃあ、こっち!」 無邪気に笑う麻里亜さんは私の手を引いて駅ビルの中にどんどん入っていく。 これで私よりも年上なんだよね。 まるで同級生みたいな若さ。 気持ちが若いっていうのか、どこか可愛らしいさがある。 彼女にあって、私にないもの。 こんな状況だからなのか、どうでもいいような事でも何かと比べてしまう。 彼女みたいに、 笑った顔が可愛かったらとか。 なんでも受け入れてあげられたりだとか。 ……スタイルが良かったりとか。 上総と仲がいいのを知ってるから尚更。 だって、上総とちゃんとわかり合うまで彼が好意を寄せているのは麻里亜さんだと思ってたくらいだし。 嫉妬ではない。 だけど、違う何かを心に抱いてる。 理想…なのか。 それとも劣等感なのだろうか。 「どうかした?」 「いえ、なんでもないですよ。どこ行くのかなーって思ってたんです」 咄嗟に笑顔を浮かべた。 ちゃんと笑えてるのかなんて分からない。 それでも笑うしかなかった。 「そう?あ、着いたわ」 「え、ここって…」 まさかだとは思うけど。 ここって。 「私のお気に入りの下着屋さん」 そのまさかだった。 彼女の微笑みがこれほどまでに悪魔のように見えるなんて。
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