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「明子ちゃんって着痩せするタイプなのね。これを見れる上総が羨ましいわ」
麻里亜さんはたまにちょっと思考が変な時がある。
羨ましいったってこんな貧弱な身体を見たところで、上総は嬉しくもないでしょうに。
いつまで引きずるんだって言われるかもしれないけど、あんな雑誌見ちゃうくらいでしょう?
それが男の性って言われたそれまでよ。
それ以上何も言えない。
「それにしましょうよ!私が奢ってあげるから!」
「え、買うんですか!?」
「もちろん!こんなカワイイ明子ちゃん見たらアイツだって普通じゃいられないわよ」
悪戯に微笑む彼女の目はどこか子供のようだった。
もし本当にこれで上総の気が引けるのなら。
賭けてみる価値はあるのかもしれない。
ねぇ、上総?
こんな小細工であなたの気持ちをもう一度こっちに向かせることはできるかしら?
「…自分で買います」
「こういう時は好意に甘えるっていうのも大事なの。私も旦那さんが喜ぶようなのえらんじゃおうかなー!」
あぁ。
麻里亜さんには敵わないな、ほんと。
こんなに私のことを考えてくれているなんて思ってもいなかった。
私だけだったらきっとこのままどうしようも出来ずに止まったままだっただろう。
それを彼女はしっかり導いてくれた。
「ありがとうございます」
「いいの、いいの。私の大事な妹に悲しい思いをさせた上総が悪いんだから!」
カワイイはずのベビードールを手にした麻里亜さんはどうしてか、すごく男前だった。
私は麻里亜さんに妹だと言われて、嬉しいような恥ずかしいような思いに包まれた。
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