仲直りは真夜中に

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「…ただいま」 乾いた上総の声がドア越しに聞こえた。 どうしよう! こ、こんな格好上総に見られたら!! いくら麻里亜さんに勝負してきなさいって言われたって、そんなまだ何も決心してないのに。 「明子?いるのか?」 上総は私の部屋の前を通り過ぎて一旦リビングに向かったらしい。 その間に急いで服を着てしまおうと思ったのに、 「明子?」 声と共にドアがゆっくりと開いた。 もちろんだが。 服は着れていない。 「お、おかえり?」 ただただ苦笑いを浮かべて答えることしかできなかった。 上総の表情を見るのが怖くて、彼のネクタイの辺りを見つめて話すのが精一杯。 だって、怖い。 もしガッカリした表情を浮かべてたら、 それこそ立ち直れない。 「お、遅かったんだね。飲み会かなんかだったけ?」 返事がかえって来なくて、流石にこたえた。 もうこの場から逃げ出したくて。 「こんな格好似合わないよね、ごめんね。もう私シャワー浴びてきちゃうから」 そう空笑いと一緒に告げて上総の横を通り過ぎようとした時、 「ちょっと、おい!待てって!」 今まで無言だった上総が声を上げた。 あまりに急だったので、驚いて私は走って上総の横をすり抜け廊下に出て走った。 こんな狭い所で逃げられるはずもないのに。 頭では分かってるのに身体は上総から逃げようと動く。 「待てって!逃がすかよ!」 当たり前だけど、あっけなく捕まってしまった。
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