第1章

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メールで聞かれるのはいい。姿が見えないから緊張しなくて済む。 だから…… 火曜の朝メールを見た時は迷った。 ここに来る、という事は寝るまでずっと顔を突き合わせなければならない。 それは心躍ることでもあるし、それと同時に気が重かった。 ただ、自分が断って誰か女性のところに泊まったりするならば……それはとても悲しいので、随分考えたが松浦は了承した。 松浦の家の使われていない北東と玄関横の北の部屋にはそれぞれ客用のベッドが完備されている。 今は全く使っていないから折に触れていつか捨てようと思っていた。 まさか役に立つ日が来るとは思わなかった。 全く使っていなかったので返事をした後すぐに寝ているマットを起こし除菌スプレーを振った。本当は日光消毒をしたいところだけれど仕事があるので日中家に帰れないので諦めた。 掛け布団もあるにはあったがいつ使われたものかも分からず、これを宮倉に使わせるわけにはいかないので買い直すことにした。 水曜日、定時に職場を出て一度帰宅し車で近くのデパートに布団を見に行った。 やはり眠りは重要だと思う。 今自分はホワイトグースのダウン率90%以上の羽毛布団を使っているが、あれは抱き心地がいい。 宮倉にも同じものがいいだろうと思う。 同メーカーのサイズ違いがちょうどあったので迷いなく購入した。 家にあったシングルのシーツも何となく黄ばんで見えたのでシーツとベッドパッドもこれを機に一新した。 購入した布団を預け他に要る物はないかフロアをうろつきながら考えた。 タオル売り場の前を通った時、そういえば家に新品のタオルがなかった事を思い出しバスタオルやフェイスタオルを買い、食器売り場の前を通れば料理をしないから客用のティーカップなどはあるのに普段使うようなご飯茶碗や汁椀が自分の分しかない事を思い出しセットで買った。 料理はしないんだけど、一応、念のため。 滞在してる間の食事はどうしようか? そういえば、工事がいつ終わるのか聞いていなかった。 普段の週末はたいてい二食で近くのスーパー、コンビニ、お弁当屋のどれかにその日の気分で買いに行く。 それで宮倉はいいだろうか…… キッチン用品売り場の前で考える。 置いてある道具を見るが、何に使うか分からないものが多い。 そういえば今まで一度も料理をしようと思ったことはなかった。
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