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「……もういい。僕も……勝手にあれを消したのは悪かった。でも、ああいうのは、」
一度言葉を切った松浦はすっと息を吸い「嫌だ」と目を合わせはっきりと言った。
「いや、消したのはいいよ。別に……ああいうの趣味じゃないし」
「じゃあ、何でっ」
「見せる為って言っただろ」
目を大きく見開いていた松浦の顔がかっと紅潮する。
「君はっ、最低だな。僕を笑い者にしようと思っていたんだ、酷いっ」
「ちょっ、なんだそれ?笑い者って、」
唇を噛みしめ憎々しげに自分を見る松浦は「そういうことだろう?」と言い捨てた。
「君には遊びの一種かもしれないけど、こっちは、こっちは、」
「おいおい、なんか勘違いしてないか?こないだも言っただろ、あんたに見せる為だって」
「どちらにしろ同じだ」
肩を震わせる松浦の、言いたいことが良く分からない。
「同じじゃねえだろ、」
「同じだ、あんなの見せられて僕がどんなにっ……。大体君はどういうつもりなんだ?僕の気持ちを踏みにじってって面白いか?君は気持ちがいいと言ったけれど、僕は、僕は君としても全然気持ち良くなかった」
ハンマー身体をぼっこぼこに殴られたよいな衝撃が襲う。
自分のセックスを評価されたことなどなかったし、否定されたこともなかった。
絶句した自分をちらりと見た松浦はそれまでの気勢の削がれたようで目を左右に泳がせた。
「僕だって……君は、君はこれからたくさんの出会いの中で恋人が出来て結婚する、だろう……多分。でも僕は、きっと君が最初で最後だし、好きだから、君がいいと言ってくれている間は何でもしたいって思ってたよ。今が長く続けばいいなと思ってた。でも、だから、ああいうのは本当に嫌だ。僕は君にあまり見られたくなかった。僕は男の身体だし、あんまり見ると嫌になるだろうって思うし、」
ぐわんぐわん耳の奥が響く、そこにぽつぽつ聞こえてくる声。
何で別れるのが前提なんだ?
見られるのが嫌で、気持ち良くなかったって事なのか?
自分は相手が快感に震える様を見ていたい。それは一般的だと思っていたし、松浦だって確かにあの時欲を感じたはずで……
理解したいが、分からない。
なんだそれはと思う、理性が否定するって事か?
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