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繭の中で……(閲覧ありがとうSS)
「そういやどこ行きたいの?」
布団の中で、いつもするように背中から抱き締めてとろとろしていた松浦に囁く。
昨日松浦に誘われたのをすっかり忘れていた。
ゆっくりと向かい合うように身体を返した松浦はやはり微睡みを纏わせたまま「うん、あの、」といい言葉を切った。
すかさず唇を合わせる。
下手なりに吸い付いてくる松浦に下肢が熱っぽくなりそうで慌てて気を引き締める。
昨日したばっかりだから今日はしない。
ほんの少し前の自分は隙があれば松浦を腹の下に組敷いた。そうする事が自分の気持ちの代弁だった。
でも今、好意を隠さない顔の松浦を見ていると無理させたくないと強く感じる。人間の気持ちはこうもあっさり変わるものなんだなと我が事ながらおかしく思う。
松浦は目だけを上げ「デートしたいなって、」と小声で言った。
「デート?」
「あ、……嫌なら本当にいいんだよ、僕とじゃねって思うし」
自分で言ってるんだから傷付いた顔をしないで欲しい。
「あんたとしなくて俺誰とデートすんの?」
「あ、……や、うん、」
顔を俺の胸に擦り付けた松浦に「どこに行きたいの?」と優しく聞いた。
ふと思う、童顔でつい忘れてしまうが松浦は俺より年上だ。やっぱりしっとり大人のデートって感じ?しっとりって……なんだ?
「あの……遊園地とか、水族館とか、映画とか……」
しっかりと間をとって、松浦はおずおずと口を開いた。
「あ、同級生が恋人と行ったって聞いて……ずっと羨ましくて……あ、でも本当に、行きたくないならいいから、」
身体をぴったりと寄せた松浦は 胸に顔を付けたままこちらを見ない。
気恥ずかしいんだろうと思う。
羨ましかったのか、そう思うと胸が熱くなる。
誰にも言えない秘密を抱えて一人閉じこもっていた松浦が憐れで。
でもそれだけじゃなく、そこから引き出すのが誰でもない自分だと思う嬉しさもある。
「全部行こう。そうだな……二週に一度」
「二週に?」
「そう一週外で遊んで次の週は家で遊ばないとなぁ?」
松浦の尻を揉むと「ひゃっ」と声が上がる。松浦は宮倉を見上げるとあきれた様子で
「もう、馬鹿」
と呟き、くすっと笑った。
End
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