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「すっげえ小さいな」
「だろ?可愛いだろ?愛実ちゃん、宮倉のおじちゃんですよ!」
「せめてお兄さんにしろよ」
苦笑しながらもカメラを回す。
うんうん、うちの愛実は可愛かろう、撮りたかろう。
満足気にその光景を眺めているとふと気が付いた。
ん?こいつ……愛実を撮ってるふりして、唯ちゃん撮ってないか?
じっと見る。
カメラのレンズは常に唯ちゃんを捉えていた。
こっ、こいつ……『愛実をあやす唯ちゃん』を撮っていやがるじゃねぇか!
なにこのバカップル!
「こっちにどうぞ」
紗奈が言うのでぞろぞろとリビングへ入る。
唯ちゃんはリビングを通り過ぎ隣の和室へ。
和室は今、愛実部屋になっていてる。
防水シートの上に愛実を寝かせると脇のカゴに入っているガラガラを取り出して振っている。
愛実は大好きな唯ちゃんにあやされて嬉しそうにきゃっきゃと笑い声をあげている。
宮倉も後を追って和室に入り唯ちゃんの正面に座りまたビデオを回し始めた。
被写体は……眺めていると愛実と唯ちゃん交互のようだ。
「なあ、撮ったのちょっと見せてくれよ」
「え、これですか?」
宮倉が録画を停止し、ビデオカメラを持ち上げた。
俺は頷く。愛実が産まれて自分でも散々ビデオカメラを回したが、他人が撮ったものはまだ見たことがなかった。
愛実は他人のカメラにどんな顔をするんだろう?純粋に気になった。
「あ!駄目っ、駄目だ!」
唯ちゃんが突然叫んだので身体がビクッと揺れた。
驚いて見ると唯ちゃんは宮倉の手にあるビデオカメラを奪い取り、開いて何かしている。
「何よ、唯ちゃん!ビックリするだろ!なぁ愛実」
「ごめん、だって、」
ビデオカメラの再生画面を食い入るように見る唯ちゃんの後ろから覗こうとすると、身体を盾にして見えなくする。
なんだ?なんかオカシナ物が写ってるのか?
画面を見ていた唯ちゃんがふと顔を上げ宮倉を見る。
俺もつられて宮倉を見る。
宮倉はいやらしい笑いを浮かべ「あんなの持ってくるわけないだろ」と嘯く。
唯ちゃんを見ると顔を赤く染めている。
「これ、どうしたの?」
「夏のボーナスで買った。外用に」
余裕の笑み宮倉と、赤ら顔の唯ちゃんを交互に見遣る。
話から察するに外用じゃないカメラがありそれは「あんなの持ってくるわけない」物……!……!
こいつら、……なにやってんの?
凄く気になるけど、これは絶対聞けない……
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