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「家ですよ。今一緒に住んでますから」 「えええええええええ!」 「あ、ねえねえ、この人、昔唯ちゃんは俺のこと好きだったんじゃないか?って思い悩んでるんだけど、どう?」 「おおいっ!言うなって!」 くくくと笑いながら紗奈が宮倉に聞くので慌てて紗奈の口を手で塞いだ。 「は?」 宮倉は仏頂面を顰めこちらを見る。 ほらそんな事言うから宮倉が俺にジェラシーじゃないかっ! 「自分で聞いてみたらどうですか?」 「聞けるか!」 同じことを言った二人だが反応はまるで違う。 紗奈は腹を抱えて笑い宮倉は冷笑を浮かべてあさっての方向を見ている。 まったくこいつらは分かっていないのか? そんなこと聞いたら唯ちゃん泣いちゃうかもしれないだろうが! 「……そう言えば、」 宮倉はちらりと和室を見て、声のトーンを落とした。 「こないだお兄さんから電話があったようなんですけど、」 「ん?唯ちゃんに?」 「ええ。……松浦さん、実家と揉めてるんですか?実家に随分帰ってないって聞いて、たまには帰れば?って言ったんですが松浦さん、僕は捨てられたようなものだから帰らないって、」 「ああ」 「本人に聞いても笑ってるだけだし、事情知ってるなら、教えていただけますか?俺……松浦さんの事は何でも知りたいです」 紗奈がちらりと和室に目を向けた。 実家と聞いて今年の年明け、初めて紗奈の実家へ『ご挨拶』へ伺った時の事を思い出して俺もため息。 『お嬢さんを下さい!』は結婚を決めるにあたり男の必ず通る道だ、と思っていた。 だから実家と折り合いの悪い(と聞いていた)紗奈を何か月も説得して漸くその席を設けることが出来た。 紗奈はあまり実家の事を話したがらなかった。 それだけ深い溝があったのだけれど仲良し家族でわいわい育った俺にはそれが良く分からなかった。 だって親子だもん、ケンカもそりゃするだろ? 俺が母ちゃん嫌いってたまに愚痴る、ほんのその程度の気持ち。 良くあるケンカがどっちも謝らないから、長引いちゃってる、その程度のケンカ。 自分が考え付く、家庭で起こるそんな感じの諍いだと勝手に思っていたし、そのくらいの想像しか出来なかった。 自分の家しか知らないから、 他の家庭の内情なんてそれまで知りようがなかったから、俺には紗奈の気持ちが分かっていなかった。
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