第1章

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帰宅して、一人だと作る気にもならずカップラーメンに湯を入れた。 その間も電話する。何度電話してもつながることは無く今も留守電に切り替わった。 また舌打ちする。 まさか山下となんかしてねーだろうなと考えてしまいムカついてスマホをソファに投げた。 松浦がいないなら、ここに帰る必要はなかった。 社を出た時確かに家に帰ろうと思っていたのにどうしてか足がここに向いた。 ソファに座って見回す。 広い家だ。 二人だとそう感じないが一人でいると寂寥感さえある。 初めてここに風呂が工事だと嘘をついて訪れた時、モデルルームみたいだと思った。 それくらい生活感が無かった。 ここで松浦は何年も一人で過ごしていたんだ。 がらんとしたリビングは足音が良く響く。 一人、ずっと思っていたんだろうか。 後姿が俺に似ているという初恋の相手を。 またムカムカしてきた。 時計を見るとラーメンが出来るまでもう少し。 宮倉は冷蔵庫からビールを取り出した。 ラーメンを空にしてビールを二本空けて腹が満たされると宮倉は大きくため息を付いた。 やりすぎた。 明らかにやりすぎた。 いや松浦も悪いけど、それでもあそこまでやる必要はなかった。 今朝起きると布団は空だった。 全部屋の扉を開けてまわり松浦を探した。 途中リビングに置いたままだったビデオカメラを手に取ると昨日見せたあの映像が消えていた。 はっとして玄関に行くと靴が無い。 背中に冷汗が滲むのを感じながら何度も電話した。一度も出てはもらえなかった。 昨晩、……無理矢理セックス映像を見せ、泣いて嫌がったのに抱いた。 それがいけない事だとは分かっていたが火が付いた自分を止められなかった。 松浦相手だと冷静さを失ってしまう。 瞼はうっすら開いているのに動く事を止めた松浦の様子に冷静に引き戻された宮倉は脱力した松浦をベッドに運びそのまま抱き締めて眠った。 松浦もまた眠ったと思っていたのに…… ああと唸り宮倉は頭を抱えた。 メールで、謝ったほうがいいのだろうか。 いや話すなら直接がいい。 顔が見たい。
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