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相変わらず俺たちの性的指向ははっきりしないが、こういう関係になってからも女の子に反応することだけは検証済みだ。
「でも付き合いで行っただけだからな。お前だって知ってるだろ、すっぱ抜かれたら嫌だから普段俺がそういうところ行かないってこと」
「だってのに、今回はどういう風の吹き回しなんです」
「ちょっと断りづらくてさ。会員制のところらしいからまあ大丈夫かなって……でも、悪かった」
良い気持ちはしないよな。
夜中まで待たされた理由がキャバクラだったら、怒りたくもなる。
この業界では付き合いを大切にしなきゃならないってことも事実だけど、でもやっぱり謝るところは謝らないと。
「別に怒っちゃいない」
「……そうなのか?」
「んな女々しいことしませんよ。仕事上仕方ない付き合いってのはある。けどな、そうは思っても気に食わねえもんは気に食わねえ」
「う、うん」
逆だったら、きっと俺も同じことを思うだろう。
自分のことを何よりも優先しろ、なんてこれっぽっちも思わない。
でもイラつくのは自由だろ、と。
「さて、話は一旦終いです」
「って、いきなり……」
いきなり人の尻を揉むな。そのままTシャツに手を突っ込むな。
言いたいことは山々だけど、こんなところでカマトトぶっても仕方ない。
「いきなりじゃねえな……あんたがシャワー浴びてる間、ずっとエロいこと考えてましたからね」
そんなの誇らしげな顔で言うことか。
「お前の頭の中で俺は何してた?」
「そうだな……ちょうどこの体勢のまま揺さぶられてたな」
この体勢って……浅野の上に乗っかって、首に腕を回してるこの体勢のこと?
「お前、最初から狙ってたな」
「こと七瀬さんに関して抜かりはないですから」
だから誇るようなことじゃないだろう。
言おうとした言葉は音になることなく頭の中で弾け飛んだ。
浅野の手が背中を這い上がる。
Tシャツが首周りまで捲れ上がり、煩わしいので自分で脱いだ。
両手で俺の脇腹から腰にかけてのラインを撫でさすり、そのたびに息が漏れてしまう。
手が止まったと思ったら、浅野は自分の首の後ろ辺りの生地を指で摘まんで、そのままグイッとTシャツを脱ぎ捨てた。
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