ある片想いのカタチ

2/7
32人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
高島葵と言います。32歳。 介護福祉士を始めて5年になります。 一度結婚に破れ、心機一転介護士の資格をとるため寝る間も惜しんだ悪戦苦闘の末、 今年ようやく資格が取れました。 現在、施設勤めですが、介護する患者さんは70歳から80歳過ぎのおじいさん、 おばあさん、無口な人も話好きな人も体力ある人もない人も、 人懐っこい人も、人嫌いな人も様々です。 同僚はほとんどが先輩で、40代以上のベテランばかり。 オムツの取り替えや入浴など手際の悪さをいつも注意されてばかりで、 始めの頃は落ち込むことも多かったのですが、最近ようやく慣れてきました。 患者さんにもいろんなキャラクターの人がいるというお話をしたのですが、 なかでも認知症を患っている方の中には大変な方もいて、 夜間の徘徊は言うに及ばず、勝手に寿司の出前を30人分頼んだりする人や、 やたら119番で救急車を呼び出す人、ちょっと下ネタっぽいのですが、 女性とみれば年齢に係りなく口説いたり、お尻に触りまくるおじいさんもいて、 昔は確かに派手に遊んだ方なのだというのは分かりますが、 それが今でも現役の気分で振る舞われるので、 どう対応したらいいのやら結構悩みました。 といっても結局、私が取った対応というのは、お尻に触られた瞬間に、 振り返りざまにパチンと頬を叩いたというものです。 そのおじいさんの呆気にとられた驚きようは、それは見ものでした。 それ以来、おじいさんの素行の悪さは二度と私に向けられることはありませんでした。また、大変仲の良いおばあさんがいて、気の合ってる同志でよくお話をしているのですが、或る時、その会話の内容に耳を傾けていると二人の話が全く通じてないことに気がつきました。互いに話がまるで一方通行なのです。 それでもおしゃべり好きな仲の良いおばあちゃん達としか、遠目には見えないのです。不思議でした。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!