2年前

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「え、いいのか?本当に。  どっちかっていうと歌いたいだろ、お前」 「うーん。  カラオケは好きだけどボーカルになりたいほどではないし。  大丈夫、ちゃんと練習するよ?  それともやっぱりバンドに入る人は経験者の方がいいかな」 「いや、すげーありがたいけど。  俺たちのこと考えてそう言ってるだろ、お前。  なんだか悪いなって」 「ううん。楽しそうだな、とは思ってたから。  ナオくん、バンド楽しいよね?  仲間に入ってもいいかな」 「ああ、すげー楽しいよ。  ありがとな。これからよろしく」 そうした経緯でナオくんのバンドに加入することになった。 そこからは、今までの比にならないほど距離が近くなった。 人前に立つとか緊張するし柄じゃないと思っていたけど、 こんなに練習が楽しいなら来てよかったと本当に思えた。 ナオくんは優しくて、 キーボード初心者の私のために、 キーボードが簡単な曲で、 なおかつ私でもわかる曲ばかりを選んでくれていた。 他でもないナオくんにそんなに優しくされて、 私は胸がいっぱいで嬉しかった。 「ユキ―っナオくん優しい嬉しいどうしよう」 「普段から優しいわけじゃないし、  アカネの優しさがちょっとうつっただけ。  ちっぽけだからそんなの。  ていうか当たり前の気遣い。  惚れた弱みで優しく見えてるだけでしょ。  錯覚 マボロシ どこがいいのかワカンナイ」 「ユキは幼なじみだからそう思うだけだよ」 そのうちに気が付くと、 私とナオくんは毎日電話をしていた。 次のライブでこの曲をやろうかとか、 楽譜が落ちているサイトでいいところがあったとか、 電話をしない日はなかった。 どちらかが寝落ちするまで電話をする日々だった。 そして更に2人の距離が変わったのはあの日。 バンドの練習後に少し遅目の歓迎会を開いてくれた日のこと。
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