2年前

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暮らすにつれ、ユキの友だちも家に遊びにくるようになり、 私もユキの友だちとどんどん仲良くなっていった。 その中で、ナオくんはユキの幼なじみだった。 同じ地元で、小学校と高校が同じ学校だったらしい。 2人は、お互いを「腐れ縁」だと言っていた。 ふたりとも田舎で珍しい父子家庭なのもあったのか、 口にはしない絆があったようにも思う。 私はいつからナオくんが好きだったんだろう。 いくら思い返しても始まりはよくわからない。 けれど、気がついたらいつも目で追っていた。 メールが来ると嬉しくて浮かれていた。 ナオくんが喜ぶことをしたいと思っていた。 好きだと自覚した頃から1年経って気が付くと、 私とナオくんの距離はとても近くなっていた。 そして、とある日 ナオくんからバンドのメンバーを探している という相談をされた。 「力になれるといいけどなぁ。  何やるひと探してるの?」 「今までロックバンドやってたけど、  これからドラムのアラタと  2人で新しいバンド立ち上げることにしたんだよ。  んで、それがアニソン系なんだけど  アラタが惚れ込んだ地下アイドルをボーカルにして  押し上げてやりたいんだってよ。  ギターは見つかりそうなんだけど、  アニソンバンドって初めてやるけど  キーボード必須なんだよね。  ロックにはいなくても良かったから  知り合いにもキーボードやってる人いなくて。  見つからなさすぎて、  キーボード経験なくてもピアノ触ったことあれば  いいって話しにはなってるんだけど、  そんな知り合いいるかな」 「キーボードかぁ。  ピアノでもOKね、わかった。  探してみるね」 しかし1ヶ月経っても、候補者はいても 加入する人はあらわれなかった。 ボーカルの子のためにはやく初めてあげたいアラタくん。 それを見てなんとかしてあげたいナオくん。 ふたりの気持ちを思ったら苦しくなって、 こんなことを口にしてしまった。 「……私がやろうか、キーボード。  クラシックしか弾いたことないけど、  ピアノなら13年やってたし」
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