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千穂は目の前に立つ前髪の長い青年から一度視線を外し、話に参加する気もなさそうな平人を流し目で見て顔をしかめた。
「今まで俺はこいつに付き合って多くの依頼を引き受けてきたが、依頼内容もろくに言えないような馬鹿に会うくらいなら、もうやめようかな」
「は? あんたに俺の何がわかんだよ?」
無愛想な青年の反論に、千穂は大げさに首を振って答えた。
「キミが何も言わないからわかるわけがない、そうでしょ?」
平人は、このような時の千穂に余計なことを言うと、自分にもとばっちりがくるとわかっていた。
だから口出しをせずに、黙って二人を見ていた。でも、今だけはそうするべきではなかった。
「まじかよ…。のえる、あいつは何も言ってなかったのか…?」
前髪の長い青年はその不機嫌そうな呟きのあと、千穂に向けてこう言った。
「最近、大事なものがなくなって…、どこを探してもないから、学校一有名だとか言われてるあんたらに調べてもらいたいと思ったんだけど」
「のえるの知り合い、ねえ…。飽きずに付き合うとか、こんな奴のどこがいいんだか」
小声の不機嫌そうな呟きも聞こえていた千穂はわざとらしくそう言うとにやりとした。
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