壱・『失せ物』編

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「キミさ、わかりにくいって言われない? 俺はどうでもいいけど、きっと苦労するね」 「は? さっきから本当に何なんだよ? いちいち変な言い方して…!」 「別に。早く帰りたいだけさ」 「おい、そっちのあんたはなんで何も言わないんだよ? ってか、本当にあんたら何なんだよ?」  ヒートアップしてきた会話に反応が遅れた平人は、なぜかにやにやしている千穂と、興奮して捲し立てる依頼人とを見比べてため息をついた。そしておそるおそる口を開いた。 「俺達はスポット潰しの二人組なんて言われてるけど、ただの二回生だよ。それで…千穂はその殺気しまって、君はとりあえず落ち着いてくれない?」 「こいつの言う通り、俺達も暇じゃない。で、俺はお前の名前を知っているが、こいつに名乗ってやれよ」  とどめのように千穂は笑みを深め、依頼人である前髪の長い青年の耳元で 「な?」  と息をかけるように囁いた。青年はぴくりと反応したが、なんとか落ちつけて平人に無愛想な態度で名乗った。  そんな二人を、千穂は目を細めて遠巻きに見ていた。 「お前、予定は?」 「これから授業」  さりげない調子の問いに、無愛想な答え。千穂は笑っていなした。
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