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なんだかんだお人好しな千穂は、妖しい笑顔で授業後にまた会う約束をした。
日が傾いてきた四時半頃、とあるファミレスのボックス席に三人で向かい合っていた。
「なんでわざわざ家帰るのに遠回りしてまで、あんた…いやお前と話すわけ? しかも俺のおごりとかふざけてんでしょ…」
「あいにく、無償で依頼を受けるお人好しではないからな。誰だろうと、扱いは同じだ」
「…ねぇ千穂、そろそろ話してくれない? 二人は仲良いけど、どういう知り合いなのさ?」
平人の困惑しきったその言葉に、前髪の長い青年も千穂も嫌そうに顔をしかめて
「こいつと仲良いとか、マジで勘弁してくれ!」
お互いを指さしながらそう言った。
(もうだめだ、これは…)
そう思った平人は作り笑いを浮かべて、話を依頼に戻すことにした。
「それじゃあ、智貴<ともき>くん。最近自分に何があったか教えてくれる? なるべく詳しく、俺達に何をして欲しいかもわかるように話してもらいたいな」
窓の外では赤やオレンジの葉が風に揺れて、夕暮れの空をカラスが飛び去って行った。
氷の入った千穂達のグラスが、カランと音をたてて存在を告げた。
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