壱・『失せ物』編

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――最近、一ヶ月くらい前から、なんだか視線を感じることが多かったんだ。講義の教室に友人と移動してても、なんか見られている気がして…、 「…それお前の自意識過剰じゃね?」 「千穂、それは言わないの。ほら智貴くんも落ち着いて、ね? はい、続き言って」  千穂の疑うような言いぐさを、平人が手振り付きでなだめた。それから大仰な仕草で手を打ち鳴らし、続きを促した。  前髪の長い青年、緋野智貴<ひのともき>は、しぶしぶ話し始めた。 ――二週間前くらいかな、自分が使った靴箱の中に、手紙が入っていたんだ。…友人達はそんなの無くてピンポイントで。  手紙を開いたら、 『緋野智貴さん、いつも見てます!  髪型も服装も格好良くて  私のタイプです。  これからも応援させてください!』  って内容で名前も書いてないしマジで恐ろしくて、その場は手紙を捨てることで収めたんだけど、次の日に『なんで捨てたの』とか『見てるだけじゃ我慢できない』とか、どんどん変なのが送られてきて、しまいには俺のTwuttor探されてリプライ送られてきて…  思い出したのか、智貴は身震いしてあさっての方向を見た。
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