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「それで? どうすんの?」
目を細めた千穂のどうでもよさそうなその問いに、
「その言い方じゃあ、千穂に突撃するつもりはないんだね?」
確認のようにちらりと隣を見ながら平人が聞くと、千穂は無言で頷いた。
千穂の向かいに座る智貴は事の成り行きを、入れ直してきた緑茶を飲みながら聞き流していた。
「俺が、突撃しようかと思ってる」
長い沈黙のあと。
砂糖五本入りの冷たくなったコーヒーで喉を潤した平人が、ため息とともにそう吐き出した。
千穂は腕を組んだまま片眉を動かした。…その台詞に少し驚いているみたいだった。
「千穂がやる気にならないってことは、危険じゃないんだろうし…」
セキュリティに関しては俺の方が詳しいからね、とぎこちなく笑った。
話が見えない智貴は固いフライドポテトを食べながら二人の話を見守っていた。
家族連れが多い店内は話し声が飛び交っていたが、いやらしいざわめきではなかった。
どこかの席の店員を呼ぶベルの音に、ウェイターが慌ただしく駆け付けていった。
時刻はそろそろ五時半になる。窓の外は冷たい風が吹き、車やバスが目的地へと急いでいた。
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