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「だいたいさ、どうしてこんな時間に出歩かないといけないんだと思う?」
不満を爆発させるかのような物言いに、千穂は少し考えたあと
『知らん。でもこの間のTwuttorもこんな時間しか更新してなかったところを見ると、夜間部の奴か?』
「そうなんだよ。しかもこの時間じゃないと、セキュリティを切っておくのは危ないみたいでね…」
『さっきまで無言で何かの作業をしていたみたいだが、もう終わったのか?』
「もちろん。教授や警備員に怪しまれないためにも、あまり時間はないんだけどね」
スマホの向こう側で、千穂が苦笑したのが気配でわかった。衣擦れの音と共に、彼は言った。
『まあ、頑張れよ。なんかあったら叫べ。通話は切らないでおいてやる』
「千穂は優しいね。一緒に来てくれてたなら、もっと嬉しかったけど」
ふ、と小さく笑って平人はスマホを持ち換えた。
どこか穏やかな雰囲気に千穂は
(背中がもぞもぞするな)
なんて整理がつかない気持ち悪さを感じていた。
風が吹き、夜の寒さをより一層倍増させた。
平人はコートの前を合わせ、気合いを入れるように、よし、と声に出した。
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