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『そもそもやるつもりすらないがな。で、目的地はどこだって?』
「科学館三階の第三化学実験室…、の横の五人用研究室。科学専攻のエリートだからって一室を私物化できるとか、お姫様もあながち間違いじゃないのかも」
しかも今は彼女しか使ってないみたいだから誰の迷惑にもならないね、と感心したように付け加えた。
科学館はひっそりとしていて時々漏れ聞こえるいびきも、微(かす)かなものだった。
『お前、今どこにいんの? そろそろ飽きたんだが…』
「一緒に来ればよかったじゃん。俺も嬉しかったのに」
沈黙。
書き消すように笑って
「冗談、もう三階だよ。スピーカーやめてイヤホン付けるね」
返事を待たずに、平人はスマホに二千円で買ったイヤホンを挿した。
電話の向こう側から抗議の声があがるも、それを無視してスマホをポケットへ入れた。
防犯のための、ぼんやりとした灯りが廊下を照らしていた。そこには彼の他に、起きている人は見えなかった。
ドア脇に第七研究室と書かれた扉の前で立ち止まると、その下の名簿を確認して今回の加害者の名前と照らし合わせる。
…間違いなかった。
戸の先にいるようだ。
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