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薬品棚を照らす明かりしか点いていない薄暗い部屋に、少女が盗んできた物であろう、あってはいけない私物が四方に溢れていた。
暗闇に慣れてきた目で辺りを確認すると、それは筆記用具だったりタオルだったり、男性が好みそうな生活雑貨が山のように積まれていた。
目を凝らせば、影でしかなかった女の姿が、段々とはっきりしてきた。
誰か、男の人が写った写真を手に持った黒髪の女子は、恍惚の表情で言った。
「あぁ、**くんはいつ見ても可愛いわ。プレゼントを受け取ってくれないのは照れ隠しかしら…?」
(うわぁ…、あれってもしかして、智貴くん? まじだったかぁ…、うっわぁ…)
目を見開き、平人は本気で気持ち悪そうに少女を遠巻きに見ていたが、気を取り直すように咳払いをして
「お嬢さん、お忘れものはございませんか?」
咳払いで人がいることに気付き、こちらを警戒していた少女へゆっくり近付くと、妖しく笑った。
「…んで、なんで、……た、あんたが、」
黒髪の少女は自分しかいないはずの教室に突然現れた平人に驚き、回らない頭でなんとか声を絞り出した。
「なんでって、…知ってるでしょ?」
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