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諭すように告げた平人は、少女の呆然とした顔の前でにたり、と嗤(わら)った。
「…し、知んないわよ! わたしはなぜ、…なんで潰し屋(の残念イケメン)がいんのか、って聞いてんの!」
「なぜ、か。…心当たりは?」
「ないっての! 帰れ!!」
いきり立った彼女の言葉に、平人は気味悪く口を広げて微笑んだ。
「それじゃあ、これは何だい?」
床に並べられていたブロマイドのような写真を、バサバサとぶちまけながら平人は少女に言う。
「……や、嫌、いや、いやだ…」
「何が嫌なの?」
男物のポーチに手をかけて、どこからか取り出したハサミで切り込みを入れようとする。
「あ、…ってよ! やめて、ねぇ…待って!」
「んー、聞こえないねぇ…」
ついに取り乱した彼女は、自分より背の高い平人の持つポーチを返して貰おうと手を伸ばして跳ねる。
(実に滑稽だ。可愛い子だったら、もっと楽しいのに…)
平人の顔は、先ほどの少女のそれよりも犯罪者じみたものに変わっていたが、気付く人はいない。
スピーカーモードのスマホの向こうからは、千穂の呆れたようなため息も聞こえた気がした。
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