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平人へ後光が差していると思ったら、彼の後ろ、つまり、廊下側の窓から光が差していた。
一方で、彼の視線の先の窓は、開いていた。端で止められている黄色いカーテンが小さく揺れた。
「どうしたらいいの?」
不安そうな女の声に、平人は顔がにやけるのを隠しもせずに
「俺に全部任せてよ」
と、どことなく軽いノリで言った。
何も疑わずに、女子学生はこくりとうなずいた。平人に対する恐怖が心を支配し、判断が鈍っているのかもしれなかった。
「それじゃあ、また。何かございましたら、潰し屋へどうぞ」
お決まりの文句を押し付けると、平人は匂いの戦場だったそこを後にした。
遅れて今回の犯人も、教室を出て行った。
時刻はそろそろ午前四時になる。平人の手の中のスマホからも、音が聞こえなくなっていた。
「後片付けねぇ、どうしよっか?」
私物がたくさん詰め込まれた空き教室を睨み付け、なんだか面倒臭そうだ。
通話中のスマホの『充電してください』の表示にすら、気だるげだった。
「もう、良いよね。あの子が悪いんだし、俺の好きにしちゃうからね」
返事のない独り言をこぼし、平人はもう一度入室した。
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